山の上ホテル
駿河台にあった山の上ホテルは川端康成、松本清張、池波正太郎など数多くの文人の常宿として知られ、本の街神保町に近い、小さいながらもアカデミックな雰囲気のあるホテルで、今年の初めに、建物の老朽化を理由に休館していました。
私は、その山の上ホテルの裏手にある小学校に通っていました。大人になってからも、友人の結婚式に出席したり、坂道の半地下にある趣のあるバー「mon cave」によく友人たちと行ったりしていました。泊まったことがあるわけではないけれど、近所にあるなじみの、文学的でおしゃれなホテルという(生意気にも)特別な思いがありました。そのホテルが休館してしまったのには、一抹の寂しさがありました。
その山の上ホテルを明治大学が継承するという記事を見つけました。外観を維持して耐震工事をして、ホテル機能を存続するそうです。なんと喜ばしい!明治大学は山の上ホテルの隣にあり、大学祭へ行ったり、六大学野球で応援したりした大学で、なじみがあるだけに余計嬉しいです。
あのあたりも随分変わってしまったけれど、山の上ホテルの趣のある素敵な建物が残るのは嬉しいです。「mon cave」も復活するのでしょうか?復活してほしいです。もし復活したら、久しぶりに行ってみたい。若いころとは違う思いがあるかもしれないし、そうだとしたらそれも味わってみたいです。
今週の展示は「第13回レッドバンブー展」 毎年ジュイエで開催される多ジャンルのグループ展、多種多様ながら、よくまとまっていて毎年レベルアップしているので、どなたでも楽しめる展示です。 秋の芸術鑑賞のひとつに是非。19日までです。
席譲れマーク??
友人がバスを待っていた時のこと、若い人から、赤のヘルプマークを見せられて「これ知ってますか?」と話かけられたそうです。知っていると答えると、「よかったです。ネットで『席譲れマーク』と書かれているんです」と。
バス停での話なので、席を譲ってくださいという理由ではないだろうし、どうして話しかけられたのかはよくわからないですが、それを差し引いても、おかしなことをネットに書き込み人がいるんだねぇというのが、私たちの感想でした。
ですが、ちょっと待って。以前、席を譲ったとき、当然とばかり偉そうに無言で座ったお爺さんにあったことがあります。このとき私はちょっとむっとした記憶があります。ありがとうとか、ちょっと会釈するとかしたっていいじゃないと心の中で…
もちろんネットに書き込みしようなどとは全く思わなかったけれど、昨今のこと、そんな思いをして書き込んでしまう人は一定数いるのかもしれません。
「子持ち様」と小さい子供がいる人を揶揄する言葉もあります。これとて、お互いちょっとした気遣いがあれば、こういうことは言わないし、言われないのではないかと思います。
僅かなものであっても、誰かの権利を譲ってもらったり、協力してもらったりするわけですから、謙虚な気持ちって忘れてはいけないと思います。反対に譲ってやった、協力してやったという気持ちではなく、もっとおおらかにすれば、みんなが気持ちよく過ごせるのではないかと思います。
「ありがとう」の一言がいえるか、いえないかで、違ってくるんだよねーとつくづく思います。
もう会期半ばですが、OBSCR個展「悪夢で逢えたら」開催中です。イラスト中心のインスタレーション、入口をも創りこんでいるダークでブラックな空間は必見、丁寧に描かれている無彩色の線画は是非じっくりみて頂きたいと思います。10日(日)まで。
巻くということ
巻いてあるもの、反物、壁紙、糸、リボン、マフラー、ロールケーキ、海苔巻き、少し考えただけでもたくさんのものがでてきます。これらは、巻いてあってほどくと意味をなすもの、または巻くことによって形をつくるものにわかれるように思います。
ことわざを調べてみると、「舌を巻く」「ねじを巻く」「しっぽを巻く」「管を巻く」「煙に巻く」、といろいろ出てきます。良い意味もあれば悪い意味もあるけれど、巻くことによって何かがおきるということなのでしょうか?いずれにせよ、身近なことに使われている気がします。
昨日から始まった「PERSONA CURATION」は、インスタレーション要素の強い写真展です。その中にロール状になっていた細長い写真も使われています。
写真といえば、L版やA4~A0くらいの、あるいはスクエアの、細長くてもパノラマ状のようなものを想像してしまいますが、もっともっと長い、1枚の写真ではなく、大小の写真を帯のような紙にプリントしたものを展示しています。それは、壁の天井近い部分からたらしたり、Rの壁に沿わせたりしています。ギャルリー・ジュイエは天井が少し高いし、Rの壁は他にはなかなかありません。そのスペースを存分に生かしていて、なるほど、こんな風に表現できるんだと、ギャラリーをもつものとして嬉しい限りです。
搬入時は、もちろん写真を巻いて持ってきたわけで、それをほどいて広げて、設営したときのときめきは、いつもとは少し違う気がしました。これが紙ではなく布だったら、洋服や着物を作っても素敵だなぁと思ったり、いろいろ想像が広がりました。
展示が終わったあとは、写真ごとに切るそうで、今回の展示の写真と並べて、この切った写真で展示するのも、また面白いかもしれません。巻いてあったものが、ばらばらになり、また意味をもつということですね。
写真展といえば、写真を綺麗に並べてあるのを想像しがちです。もちろんそれも見ごたえがあるものなのですが、こういう風に空間ごとデザインしてしまうインスタレーション的な写真展もまた興味深いものです。
文字で書くとわかりにくいですが、百聞は一見にしかず、是非実際にご覧ください。
「PERSONA CURATION」は明日(27日)まで。
Immersive Museumとteam Labo
最近、映像の展覧会を2つ観に行ったので、ここに覚書。
1つはImmersive Museum Tokyoの「印象派と浮世絵」
寝転んだり、座ったりして、360度の画面をみるのはとても迫力があります。これは北斎の有名すぎる「神奈川沖浪裏」ですが、展示ではゴッホの「星月夜」と対比しています。他にも印象派と浮世絵を大画面で比べたりして、とても興味深かったです。私は撮らなかったけれど、名画を背にした写真タイムなどもあって、いまどきに工夫されているなという感じ。映像自体は30分あるかないかで、もう少し長くてもという感じはしましたが、私はやっぱり浮世絵が好きと実感できるよい展覧会でした。
もう1つは、麻布台ヒルズの「team Labo Borderless」、お台場に行きそこなっていたので、絶対こんどこそはと思っていた展覧会。
これは入口、写真に撮ると文字がうきあがるという、もう入場のときからわくわくするしかけ。中はいくつかの部屋にわかれていて、それぞれ映像を駆使して、面白かったり、美しかったり、派手でわぁーとなったり、薄暗くてずーとみていると変わっていったりとか、しかもその時々で映像がかわるので、何時間いても楽しめるといった感じ。いったい何台プロジェクターをつかえば、こういうことができるのだろうと余計なことまで考えてしまいます。
平日の夕方だったせいか、日本人より外国人のほうが多いくらい。麻布台ヒルズは交通の便もいいし、新しい観光名所となっているのだなーと感心しきり。
スマホが普及、高性能化しているせいか、映像のハードルは以前よりずっと低くなっていると感じます。小さなギャラリーのジュイエでも、最近、映像の展示が増えてきています。もちろん、かつてからの絵やイラストや写真の展示も素敵なのだけれど、展示の幅が広がるのは楽しいなぁと思います。
今週は「「未完」~旅の途中~ Sopy~ & 空タツコ 二人展」です。 絵画と立体、オブジェの展示。鮮やかでパワフルな作品に元気をもらえます。特に大作の力強さは必見、生命の力を感じます。是非お越しください。22日まで。
ノーベル平和賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。何十年にもわたって、核廃絶の声をあげてきた被爆者の方々の喜びはいかばかりのものかと思います。この受賞は世界中の核の脅威に警鐘を鳴らすものとなりそうで、私たちにとっても大きな意味のあるものでないかと思います。
えっ?と思ったのが、昨日の朝日新聞の夕刊トップ、ノーベル平和賞についてふれているものの、日本被団協が受賞するかもしれないということは一言も書いていない。「ノーベル平和賞の有力候補」にも挙げていません。
2024年10月11日の朝日新聞夕刊より
これってどうなの?確かに団体・個人のノミネートが200以上もあり、どこが受賞するか、予想できない状況ではあったようです。ですが、日本の団体だし、日本被団協は1995年にも有力な候補だったらしいし、かつても核兵器に反対する団体も受賞していることだし… だったら、どこかにちょっと触れてもよさそうなものだと思います。取材不足なのか、最近軍事に力をいれている政府に忖度したのか、よくわかりませんが、どこか釈然としません。
ウクライナやガザのこともあり、日本も軍事予算を増大させていて、世界中が軍国主義に向かっているような傾向があります。
ところが、最近、Netflixが世界中に「火垂るの墓」を配信して、大ヒットしているそうです。このノーベル賞受賞や「火垂るの墓」の大ヒットなどをみると、世界中の人が核兵器や戦争に「NO!」を叩きつけているんだなと感じます。「ノーモアヒロシマ」や「ノーモアナガサキ」を死語にしてはいけないとつくづく思います。
終末時計は、いま過去最短の残り90秒だそうです。この残り時間が少しでも長くなりますように。
今週の展示は、舩橋陽 / 嶋田晃士 二人展「うたゆたう」です。 音を主体とするインスタレーション。音と絵画と写真と音を発する物体が交りあい、創り出した空間。会場でその一体感を感じて下さい。
中央線芸術祭のプログラムの一つで、入場には、当会場でも購入できる共通チケット(500円―後半割引)が必要になります。15日まで。
宝くじ
2、3か月に1回、宝くじを買っています。
以前はジャンボ宝くじを買って、もし当たったらあれしたい、これもしたいと夢を頭の中で描いていました。当たるわけないけど、絶対当たらないというわけではありません。夢をみるのも悪くないんじゃないかと思っていて。
でも少し前に気づきました。今何億って当たったってどうするんだ?そんな大金使いきれるわけないじゃない。例えば、家を買ったり、建てたり、売ったりするのってすごくエネルギーを使います。起業したりするのもしかり。とても小さいものながらも経験したり、手伝ったりしたことがあります。小さくても、こんなにエネルギーをつかうんだから、今更やりたくない。(年はとりたくないです。はい)
そんなわけで、今はもっぱらナンバーズを買っています。これなら当たったとしても何十万、せいぜい百万です。これなら楽しく無駄遣いできそうです。お金は自分のために使いたいですから。
まぁ、多分当たらないんですけどね。夢は小さくなったけど、小さな夢をみるのも悪くないんじゃないかなと思います。
今週の展示は、yomi写真展 「フィルムのなかのキミ」。少女写真家飯田エリカさんとモデルのyomiさんの、物語性のある素敵写真展。3日間だけの展示ですので明日29日までです。
「かわいい」の追求
「かわいい」って頻繁につかうけれど、どこか曖昧な言葉のような気がします。「Kawaii」とアルファベットでつづれば、今や国際的に通じる言葉です。それはアニメやキャラクターのかわいさに通ずることになるのでしょう。
もう随分前になりますが、友人の娘(ハーフのフランス人)とその従妹(フランス人)が日本に来た時に、キティーちゃんの雑貨に夢中になったり、原宿で買ったアニメのコスプレをまとって大騒ぎしていました。これなどは、「Kawaii」の範疇に入るものなのかもしれません。
今、ジュイエで展示している木南さんの展示も、「かわいい」を追求している展示ではないかと思います。でも、「Kawaii」とは違うし、ラブリーな感じでもない。ぬいぐるみが主体の展示ですが、今はやりの「もふもふ」して可愛いというのとも少し違う。ちいさな不思議な生き物がいっぱいいて、かわいくて楽しいといった感じなのです。
「Kawaii」「可愛い」「かわいい」「カワイイ」と表記もいろいろあるけれど、木南さんの作品はひらがなの「かわいい」が一番あっているような気がします。「かわいい」についてあまり深く考えたことがなかったけど、それを考えさせたのが作家のオリジナリティのなせるわざですね。
それにしてもいろいろな種類の展示があるものです。日々これを味わえるのは幸せなことだなぁと思います。
今週の展示「木南 玲個展「しゅうごう!」は24日まで。ほんわりと優しい気持ちになれる展示です。是非お越しください。
中央線にグリーン車
阿佐ヶ谷駅で中央線に乗ろうとして、乗り換えの関係でホームの一番後ろまで歩いていったら、「ここには10両編成は止まりません」というシールが貼ってありました。え、中央線って全部10両じゃなかったっけ?
そう疑問に思っていたら、こんな記事をみつけました。えー、中央線にグリーン車ができるんだ。しかも2階建てですって。考えてみれば、中央線は大月まで行っているものもあるし、東京―八王子間でもかなりの長時間、あってもおかしくないのかもしれません。
料金は?といえば、50キロまで約1000円、ちょっと高いけど快適にすわれるならいいのかも、モバイルスイカなら750円、JREポイントもつかえるという今時の料金体系。モバイルについていけないとダメな世の中になったんだなぁとつくづく思います。まぁ私は阿佐ヶ谷、高円寺あたりから~東京、~三鷹の区間しかほぼ使わないので、必要ないんですけど。(とかいいながら、新しいことを覚えるのをさぼろうとしている私)
来年の春くらいまでは、10両と12両(グリーン車あり)が混在するので、お試し期間となり、グリーン車が無料で利用できるそうです。乗ってみたいけど、混むんだろうなぁ。果たして、私は春までに乗れるのでしょうか?
今週の展示は、「更衣室」更衣室から連想させる多ジャンルの作品の五人展。大胆な描写もあり、繊細で細かいイラストもある、多彩な表現の展示をお楽しみください。17日まで。
サグラダファミリア
30数年前に、ポルトガルとスペインを旅したことがあります。リスボンから夜行列車でマドリードへ、その後バルセロナという3都市をめぐって、それぞれの街の違いが楽しかった記憶があります。特にバルセロナはおしゃれな感じで、スペインでありながらカタルーニャ語という土地の言語があり、レストランのメニューも、スペイン語とカタルーニャ語の二つで書かれていました。そしてなんといっても、一番印象に残っているのが、ガウディのサグラダファミリアでした。
最近、知人が2人、バルセロナに行っていて、昨今のことSNSにサグラダファミリアの写真を沢山載せてくれていました。
30数年前ですら、着工(1882年)から100年以上も建っていたわけですが、できていたのはいくつかの塔と正面のファサード(それすらまだ未完成)だけで、内部はまさに工事現場で資材が置いてあるだけ、そこで職人さんたちがたらたらと作業しているという感じでした。完成まであと100年以上もかかるという説明があって、100年以上もかかってこれだけで、あの働きぶりなら、さもありなんと思ったことを覚えています。それでも、塔とファサードだけでも頭がぐるぐるするくらい素晴らしくて、感激したことはいうまでもありません。
ところが何と、あと数年で完成するらしく、知人の写真からも、内部の様子がうかがえて、あの工事現場だった内部に教会ができていました。知識としては知ってはいたけれど、実際の写真をみて驚きです。
教会の外部の壁の色が、古いほう(多分私がみたほう)と新しいほうで茶色に濃淡があるらしく、長い長い工事だったのだということがわかります。
そして、観光客が多いのにもびっくり。あのときはそんなに観光客いなくてゆっくりみれました。当時はSNSはおろか、デジカメすらなく、一枚では入りきれないファサードを何枚にもわけて写したものでした。それでも、あの半分工事中のサグラダファミリアをみることができたのは貴重な体験だったのかもしれません。
でも、どうせなら何年か後に完成するサグラダファミリアを、実際にみてみたいなぁと思います。
今週の展示は、k.kai13 x SATSUKI 写真展 「煌々」。煌々とは月が輝くさま、タイトルにぴったりの、輝くように、そして少し寂しい、満月の夜のような、そんな写真展です。モデルさんの目力とそれをとらえたカメラマンさんの写真を是非ご覧ください。素敵な写真展です。10日まで。
ゲリラ豪雨
この前のブログで暑さに文句を言って、気候の神様の怒りをかったのか(そんなわけないですけど)、21日の水曜日、東京に恐ろしいほどのゲリラ豪雨がありました。
なにしろ、新宿ではあふれた水の勢いでマンホールのふたがぶっとんでしまいました。あのふたって100kg以上あるのに飛んでしまい、しかも真っ二つに割れてしまうなんて… 落ちてきたとき何かにぶつからなくてよかったです。新宿駅では雨漏りで、まるで外のようにみな傘をさしているし、品川駅の階段などは滝のように流れていました。山手線の車両は上からどしゃぶりの雨で洗車しているよう。こんなの見たことありません。
でも家のほう(阿佐ヶ谷近辺)は、雨はふったけどたいしたことはなかったです。都心だけだったのねと、そんな話を友人たちとのグループラインでしていたら、練馬住みの友人が「なんで?うちのほうは隣のマンションがかすむほどのひどい雨だったよ!」と。
調べてみると井の頭公園も道が川のようになっていました。新宿も吉祥寺も練馬も大雨なのに、なんでうちのほうはたいして降らなかったの?
ニュースの雨雲レーダーをみてみると、なんと中野区、杉並区、世田谷区の一部だけ、細長く雨雲からはずれています。そのまま南東にずれていっているので、その地域はずっとたいしたことないまま。こんなことってあるんですね。
昔、神宮球場で、マウンドは晴れているのに、客席だけ夕立というのに出会ったことがあるけれど、夏の雨って本当にわからないものですね。
今週の展示は「齊藤見佳展 ~Restart~」、細密画の風景画の展示。美しく繊細な細密画に心が洗われるよう。ほぼモノクロですが、時折まじる色のついた絵に目を惹かれます。素敵な展示です。
作家の齊藤見佳さんは、11年前に故山本二三先生と、ギャルリー・ジュイエで2人展を開催しています。今回の展示は二三先生と「次はジュイエで個展を」と約束されていたそうです、こういうご縁はとても嬉しいです。
3日間の展示なので、明日(25日)まで。是非お越しください。